ホットスタンプ とは、箔を転写することで製品にメタリックな加飾を施せる印刷技術です。
凸版で箔フィルムに熱と圧をかけることで製品に模様やデザインを転写することができます。

箔押しとも呼ばれ、キラキラした輝きや特別な質感を付与できることから、製品の高級感の演出他製品との差異化ブランドイメージの向上に寄与しています。

今回は中でもプラスチック製品への ホットスタンプ 加工について取り上げます。

ツジカワは約半世紀前からプラスチック向けのホットスタンプ版を製作しはじめ、今や国内トップメーカーとして数多くの実績を積んで参りました。

実は我々の身の回りにはホットスタンプ加工されたプラスチック製品がたくさんあるんです!

どんな仕組みなのか、どんなものに使われているのか、メリット・デメリットも交えてご紹介いたします!

コンパクト天面のホットスタンプ
化粧品コンパクト天面へのホットスタンプ例

ホットスタンプ 加工の仕組み

ホットスタンプ加工には

  • ホットスタンプ機
  • 箔フィルム
  • ホットスタンプ版(+治具)

が必要になります。箔フィルムはベースフィルム・接着層などが重なって層状になっています。ベースフィルム側からホットスタンプ版で加熱・加圧 することで着色層が圧着され、ホットスタンプ版の凸部分の絵柄が転写される仕組みとなっています。

プラスチックへの ホットスタンプ 工程図解

ホットスタンプの過程を動画にまとめましたので、こちらもご参照ください。

曲面のあるプラスチックへのホットスタンプ加工(ツジカワyoutubeチャンネルより)

プラスチック( 樹脂 )成形品向けの ホットスタンプ 版

そもそも成形品とは?という話なんですが、ここでは主に「プラスチックを形作ったもの」 という意味合いで使用しています。

プラスチック成形品へのホットスタンプ加工に使用される版は大きく分けて下記の2種があります

  • ラバー版
  • 金属彫刻版

多くの場合、アルミなどの金属に特殊な耐熱ゴムを貼り付けたラバー版を使用します。

平ラバー版画像
ラバー版

紙製品と違い、プラスチック成形品はヒケ(射出成形時に生じる凹み)や歪みがあり、転写面が均一ではありません
ラバー版は金属版に比べてクッション性が高く、こういった凹みや歪みを吸収して、被転写物(ワーク)に密着するため加飾不良が少なく、被転写物を傷つけにくい特長があります。

平彫刻版画像
彫刻版

一方、鉄や真鍮などの金属彫刻版はラバー版よりも絵柄の再現性が高い、印刷物に押し込んだような表現ができる、などの特長があります。

ホットスタンプ の印刷方式

プラスチック成形品へのホットスタンプは版が上下するアップダウン方式と 加圧ロールで圧着するローリング方式があります。

アップダウン方式

平面・曲面問わず製品の一部にホットスタンプ加工を施す場合に用いられます。

上からホットスタンプ版を押し当てて印刷物に箔を熱転写する方式で、成形品の形に沿った版や治具を作る必要があります。

アップダウン工程図
加工には被転写物の形状に沿った版が用いられる。
平ラバー版とRラバー版
アップダウン用のラバー版※成形品によって形状が変わる

ローリング方式

主に円筒状の製品外周にホットスタンプ加工を施す場合に用いられます。製品を機械にセットし、回転させながら版に押し付けることで印刷物に箔を熱転写するやり方です。

ローリング方式図解
ローリング方式で使用されるのは平彫刻版・平ラバー版などの主に版面がフラットな版が使用されます。
ロールオン方式用のラバー版
ロール転写方式用のラバー版

実用例:プラスチック( 樹脂 )成形品への加飾

ホットスタンプ加工をよく採用される製品として、 自動車部品・化粧品容器・家電製品などのの部品が挙げられます。

自動車部品

内装・外装ともにホットスタンプ加工がよく用いられています。

エンブレムなどわかりやすい場所に限らず、レバーやメーターリング、ポインター指針(メーターの針)など、細部にホットスタンプ加工を施すことでプラスチック成形品だけでは出せない高級感・意匠性を持たすことができます。

シフトレバー
シフトレバー(周りの銀色のところ)
車のエアコン吹き出し口
エアコン吹き出し口(ルーバーやつまみ部分)

ステアエンブレム
ステアエンブレム(ハンドルの真ん中にあるエンブレム)

自動車外装関係

フロントグリル
フロントグリル
フロントグリルエンブレム
フロントエンブレム

化粧品容器

外側の紙パッケージから、中身のプラスチックボトル・チューブ容器に至るまで、あらゆる所でホットスタンプ加工が多用されています。

化粧品ボトル・クリームジャー容器

化粧品ボトル
クリームジャー容器

商品名やライン入れのホットスタンプ加工が多くあります。
フタはホットスタンプ加工を施すこともあれば、蒸着・金冠などいろいろな方法で加飾されています。

チューブ容器

チューブ容器
チューブ容器は柔らかいので空気を入れて膨らませた状態で
ホットスタンプ加工を施す。

口紅・グロス容器

口紅
ワンポイントのライン入れや商品名のホットスタンプ加工が多い

コンパクト

ラバー型_コンパクト&押し見本
ファンデーションやアイシャドー容器の天面に加工を施す事が多い。

その他(家電・釣具関係・医薬品・アミューズメント関連)

家電

白物家電
企業名のロゴや商品名の他にボタン部をホットスタンプ加工されることも。

釣具関連

ルアー画像
キラキラと輝いて魚を引き付けるルアー
実はホットスタンプで加工されていることも多い。
ルアー専用の箔もあるほど。

アミューズメント関連

ホットスタンプ加工されたパチンコ筐体の一部
パチンコ筐体の一部やおもちゃなどにも
ホットスタンプ加工が多用されている。

プラスチック成形品への ホットスタンプ のメリット・デメリット

ホットスタンプ加工のメリット

  • 高級感:金属光沢で製品に高級感を付与することができる
  • 省工程:塗装やメッキ加工に必要とされるマスキング・乾燥などの工程が不要
  • 環境負荷が少ない:塗装やメッキ加工と違い薬品や溶剤・溶液を必要としないため環境負荷を減らすことができる
  • コンパクト:大掛かりな設備が不要。ホットスタンプ機は小さいものであれば卓上のものもあるほど。塗装やメッキに比べると省スペースで導入が可能
  • 多様なバリエーション:箔のバリエーションが豊かなのでメタリックな質感以外にも木目調や革・ウロコなど様々な表現が実現可能
  • 小ロット多品種対応可:箔や版を変えることで変化がつけられるので小ロット多品種に対応しやすい

ホットスタンプ加工のデメリット

  • 制作する成形品に合わせた版・治具・箔が必要
  • 大きい成形品の場合印刷工程を数工程に分ける必要がある
  • 印刷範囲が限られている(曲面がきつい場合は1工程での印刷が難しい)

まとめ

紙製品だけではなく、プラスチック製品に対してもホットスタンプ加工が多く使用されていることがおわかりいただけたでしょうか?

ややもすれば安っぽく見えてしまいがちなプラスチック製品がホットスタンプ加工でグレードアップしちゃうんです。

ツジカワが製作しているホットスタンプ版や治具についてはこちらの記事もぜひご参照ください!

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