箔押しについてイチから徹底解説!【 箔押し とは?】仕組み・種類・活用事例を国内トップクラスの箔版メーカーが解説
箔押し (はくおし)とは、金属の版(箔版)を使い、熱と圧力で金属箔やホログラム箔を紙やプラスチックに転写する加工技術です。
箔や版を変えることで印刷物にメタリックな光沢やマットな質感を付与することができ、高級感や特別感を演出できます。
ツジカワは、1921年の創業以来、100年以上にわたり彫刻技術をコアとしたモノづくりを続けてきました。現在では、名だたる数々の企業と取引を重ね、国内トップクラスの箔押し版・エンボス版メーカーとしての地位を築いています。
そんなツジカワが箔押しの種類やメリット・デメリット・活用事例などをご紹介いたします!

箔押し 加工の仕組みと特徴
箔押しは、加熱した「箔版」に圧力をかけ、凸部分のデザイン通りに箔を紙などに転写する加工技術です。
「箔押し」と聞くと「難しい」といったイメージを持たれることがありますが、印刷の仕組みとしては非常にシンプルなのです。

箔押し印刷には
- 箔(金・銀・ホログラムなどの箔が巻かれたロール状の素材)
- 箔押し機(および加工業者)
- 箔版(デザインが彫られた金属の版)
が必要になります。
金・銀からホログラムまで!箔ロールの種類
箔押しに使われる「箔ロール」は、アルミなどの金属粉をフィルムに蒸着し、ロール状に加工したものです。

Photo by MIX JAM DESIGN
箔には様々な種類があり、代表的なものとして以下のようなものがあります。
- メタリック箔(蒸着箔):金や銀のような光沢のある箔。消し金など、ツヤのない蒸着箔もある。
- 顔料箔:顔料と樹脂をベースにコーティングした転写箔。鮮やかな発色が特徴。
- ホログラム箔:角度によって色が変わる特殊な仕上がりの箔。
さらに、光を反射して球体のように見える「レンズ箔」など、箔の種類は膨大で、数えきれないほどあります。

使用する箔によって仕上がりの印象が大きく変わるうえ、同じデザインでも、箔の種類によって表現が難しい場合があるため、事前に校正を取ることが望ましいです。
また、箔押しを依頼する加工業者によって、取り扱い箔の在庫が異なるため、希望する箔がある場合は事前に確認することが大切です。
加工業者の在庫を活用することで、スムーズな加工ができるだけでなく、コストや納期を抑えられることもあります。
箔押し機について
箔押し機は、大きく分けて熱盤が上下して箔押しを行うアップダウン箔押し機(平圧機)と、円形のローラーが回転して箔押しを行うシリンダー箔押し機の2種類があります。
アップダウン機では、熱盤の上に金属製の版(箔版)を取り付け、熱と圧力を加えて箔を印刷物に転写します。
熱盤が上下に動くことで、箔版が箔と印刷物を押し当て、デザインが転写される仕組みです。
箔押しの温度は一般的に110°~130°程度です。
一方、シリンダー機では、下に取り付けられた熱盤の上を円形のローラーが回転しながら上下運動し、箔を押し付けます。
アップダウン機が「面」で圧力を加えるのに対し、シリンダー機は「線」で圧力をかけながら転写するため、広範囲の箔押しに適しているとされています。
ただし、自動機などの大型アップダウン機であれば、より強い圧力を加えられるため、広範囲の箔押しも可能です。
箔押しの仕上がりには、「箔」「紙」「機械の特性」「版の種類」など、さまざまな要素が影響します。そのため、絶対にうまくいく方法があるわけではなく、試行錯誤が求められるのが箔押しの難しさであり、面白さでもあります。
ツジカワの箔版の種類と特徴
さて、ツジカワが作製している箔を印刷するための金型、「箔版」をご紹介します。
箔版には大きく分けて「腐食版」と「彫刻版」があります。
腐食版
腐食版は薬品で金属を腐食(エッチング)して製作された版です。日本国内の箔押し印刷に最も一般的に使用されています。
ツジカワで取り扱っている腐食版の材質は銅とマグネシウムの2種類です。
後に紹介する「彫刻版」と比較すると安価で短納期の納品が可能です。
アップダウン機では、熱盤の上に金属製の版(箔版)を取り付け、熱と圧力を加えて箔を印刷物に転写します。
熱盤が上下に動くことで、箔版が箔と印刷物を押し当て、デザインが転写される仕組みです。
箔押しの温度は一般的に110°~130°程度です。


一般的な「通常箔押版」だけではなく、版面に特殊な処理が施された「彩光腐食版」「チェンジング版」「マジックエンボス版」などの特殊箔押し版もあります。

彫刻版は切削工具で金属を削り出して製作された版です。近年ではマシニングセンタ(プログラミングに従って自動で切削や穴あけをしてくれる機械)で作製することが一般的です。
腐食版に比べると高価で作成納期がかかりますが、
耐久性が良い、複雑な凹凸表現が可能、箔押とエンボスの同時加工が可能といった利点があります。

箔押し加工のメリットと注意点
箔押しのメリット
1. 高級感を演出し、印刷物の付加価値が向上する
→ 金・銀・ホログラムなどの輝きが、上質で洗練された印象を与えます。
2.多様なデザイン表現が可能
→ 箔を変えるだけではなく、特殊版を使用する、アフタープリントを施すなど組み合わせ次第で無数のバリエーションを生み出すことができます。
3.インキでは表現できない輝きや質感を再現できる
→ メタリックやパール調の光沢感は、オフセット印刷などの印刷方法では再現することができません。
4.小ロットでも対応可能
→ 版を作成すれば、小規模な生産でも安定した品質で加工できます。

箔押し加工の注意点
1.小さな文字や細かいデザインはつぶれる可能性がある
→ 版で絵柄として残っていても、細かな部分は箔押し時に埋まってしまうことがあります。
2.箔と紙の相性によって仕上がりが変わる
→ 印刷物と箔の組み合わせによっては、箔がうまく定着しないことがあります。
3. 印刷物の裏側に影響が出ることがある
→ 圧力をかける加工のため、印刷物の裏側に箔押しの跡が残る場合があります。

箔の選定や仕立てがカギとなる。
これらの注意点については、紙や箔によって条件が変わるため、不安があれば加工業者に事前に相談するのがおすすめです。
箔押しの活用事例
パッケージ(化粧品・食品・ギフトなど)
化粧品、お菓子、酒類などのパッケージに箔押しを使用することで、商品の品質や高級感をアピールし、ブランド価値や商品の魅力を高められます。
名刺・ショップカード
ブランドのロゴや社名を箔押しすることで、上質で印象に残る仕上がりになります。

グリーティングカード
クリスマスカードや年賀状などに箔押しを施すことで、メッセージに華やかさと特別感を加えます。
オリジナルグッズ(同人誌・ステッカー・レターセット)
近年同人誌や個人クリエイターの方々から箔押しに関する問い合わせが急増しており、箔押しへの関心度が高まっていることがうかがえます。

書籍の装丁
高級感や特別感を出すために、タイトルや装飾部分に箔押しが使われています。

彫刻版に使用された箔10種x腐食版に使用された箔10種x紙10種=1000パターン
という前代未聞の装丁
ラベルやシール
商品ラベルやステッカーに箔押しを加えることで、ワンランク上のデザインに。

文房具(ノート・手帳・メモ帳・ポケットフォルダなど)
手帳やノートの表紙に箔押しを施すことで、デザイン性を高める効果もあります。文具イベントでも箔押しノートを多く見かけるようになりました。
版を使わない「箔」加工もある
箔を使った印刷加工にはコールドフォイル印刷、デジタル箔など箔押し以外にも色々とあります。
これらはインキやトナーを刷り、その上に箔を重ねて定着させる版がいらない箔の印刷方法となります。
どの加工にもそれぞれ得意な点や不得意な点があるため、目指す仕上がりに合った印刷方法の選定が必要となります。
エンボス加工と箔押しのコンビネーション
箔押しとエンボスを掛け合わせることでより存在感のある仕上がりにすることができます。

エンボスのあと箔押しをしてしまうと、エンボスで膨らませたところが凹んでしまうため、箔押し→エンボスの順で加工します。
箔押しとエンボスを1工程で加工できる「箔同時エンボス版」の作製もツジカワが得意とする技術です。

上にセットする凹版、下にセットする凸版で紙を挟みこんで加工する。
箔押しの可能性は無限大!

箔押しは、かつては高級パッケージや書籍装丁など限られた分野で使われる技術でしたが、近年では同人誌やオリジナル文具など、個人やクリエイターの作品にも広く取り入れられるようになっています。 同人誌イベント、文具イベントなどでの箔押し製品の人気も、その多様化を象徴しています。
さらに、ブランドパッケージにおいても、箔押しは特別感を演出する重要な技術として変わらず支持されており、その価値は今もなお高く評価されています。
箔押しの仕上がりは、「絵柄」「版」「紙」「箔」「機械」「温度」「圧力」など、さまざまな要素が複雑に絡み合うことで決まります。 その奥深さゆえに、理想の仕上がりを実現するには、確かな技術と経験が求められます。
箔押しを支えるのは、加工業者、箔製作会社、商社、印刷会社など、多くのプロフェッショナルの研究と技術の積み重ねです。 ツジカワもその一員として、箔押しの表現をさらに拡げるために、版の研究を続けています。 どんな条件でも美しい箔押しを実現できる版を作ること——それが私たちの究極の理想です。
