前回の記事で箔押し前の準備作業について紹介いたしました!

前回記事→【保存版】 箔押しマイスターが教える!箔押し前の準備いろいろ

今回は、細かい絵柄や文字の箔押し時のトラブル解決方法を箔押マイスターワタナベとともに検証します!!

男性が箔押し機の前で作業している
ツジカワの箔押し・エンボスマイスター ワタナベ 
photo by MIX JAM DESIGN

最初に

ネタバレのようになりますが 本記事は箔はこれがいい!とか、仕立ては絶対これがいい!という内容ではありません。


絵柄や押す紙の性質によって最適な方策は変わります。
加工者が、様々な方策をトライして、調整をくり返すことで、案件ごとの最適な仕様を早く発見できるようになることが最も重要であると我々は考えています。

今回の「紙」「箔」「機械」「絵柄」ではこうなった、という内容であり、これらの条件が1つでも違えば結果は変わります。

つまり、箔押しは常にそれら多くの条件に左右される加工であり、最適な条件は案件ごとに変わります。

不具合が起きたときはこんな方法も試してみよう!

ということを示すための検証ということをご理解ください。

本記事が箔押しに悩む加工者の一助となり、箔押し業界の技術向上を後押しするものにするものになればこれほど嬉しいことはありません。

箔押しトラブル、まずはどうしたらいい?

今回は銅7mm版を使用して、通常の文字と、ベタの中に白抜きの文字がある抜き文字を箔押ししてみます。
明朝とゴシック体の6~10ptの文字がならんでいます。

便宜上ベタがないほうを「凸文字」(上)ベタがあるほうを「抜き文字」(下)とします。

銅版の写真 細かい文字が並んだ限界見本
上を「凸文字」下を「抜き文字」と呼ぶことにする

こういった細かい文字や絵柄を箔押しする際によく生じるトラブルとして

  • 文字・絵柄が潰れる
  • 白抜き部分が箔づまりをおこす

といったことがあります。
「こんなときどうしたらいいですか?」とワタナベに聞いてみたところ

「最初に考えるのは箔を変えてみることだね、それが無理なら圧胴仕立てを変えるかな」

とのこと。

というわけで、「箔」「圧胴仕立て」という2つの条件を変えた場合にどうなるのかを検証してみます。

箔の種類

まず、色味が同じ2種類のゴールド箔を用意しました

  • 柔らかめの箔
  • 硬めの箔

「箔に柔らかいとか硬いとかがあるの!?」
と思われるかも知れませんが、あるんです。

箔は厚さ4~6μ程度と非常に薄いのですが、離型層・着色層・蒸着層・接着層というレイヤー構造になっており、接着層の厚みや離型層の種類などによって紙との相性が変わります。

箔について

箔の構造についてはカタニ産業株式会社様や村田金箔株式会社様のHPがわかりやすいです。

箔の「柔らかさ」「硬さ」は定義が難しく、非常にマニアックな話になってしまうので、ここではそういった種類がある、ということにとどめておきます。


箔を扱っておられる会社であればそのあたりは把握されているので、ご購入先にご確認ください。

圧胴仕立ての種類

仕立て材は3種用意しました。。

  • 積層板(グラスボード)(エポキシ樹脂を層状に固めたもの)
  • プレスボード(パルプを圧縮したもの)
  • プレスボード+PPシート(プレスボードの上にPPシートを乗せたもの)

仕立てに関してはこちらの動画にて解説しております。

以上箔2種×仕立て3種=6種の組み合わせを検証してみます!

仕立てと箔の組み合わせ表
6種の組み合わせで検証 
箔押しに使用した紙はキャストコート紙220kg

柔らかい箔と硬い箔の違いを検証

まず柔らかい箔と硬い箔の違いを検証してみました!仕立てはどちらも 積層板(グラスボード)です。

積層板を敷いて柔らかめ箔で箔押しした結果
柔らかめの箔を使用した箔押し 
凸文字ではゴシック体が埋まりがち。
抜き文字ではリュウミンの細いところが埋まっている
仕立て:積層板 硬めの箔で箔押しした結果
硬めの箔を使用した箔押し。
凸文字も抜き文字もきれいに箔押しできている。

箔押しをしてみると、どの仕立てにおいても硬めの箔に変更したほうが文字が潰れずに箔押しできていることがわかりました。

今回の条件に関しては硬めの箔を使用したほうが絵柄の再現性が良いようです。

(※もちろん紙や絵柄によっては柔らかめの箔が向いている場合もあります。)

仕立てを変えてみる

しかし、ゴールドやシルバーなどの定番色であれば、柔らかめや硬めなどの箔のバリエーションがありますが、使用する箔色によっては、そういった種類がない場合があります。

箔を変えられない場合は、仕立てを変えてみてください。

柔らかめの箔を使用して、3種の仕立てでどのように差が出るか検証してみました。

動画内では積層板とプレスボードの比較をしていますが、より差がわかりやすかった積層板とプレスボード+PP(プレスボードの上にPPシートを敷いた)の結果を抜き出してみます。

仕立て:積層板 箔:柔らかめ で箔押しした場合
仕立て:積層板 箔:柔らかめ
仕立て:プレスボード+PP 箔:柔らかめ で箔押しした場合
仕立て:プレスボード+PP 箔:柔らかめ

ちょっとわかりにくいので差が出たところをさらに拡大してみます。

   

仕立ての違いによる箔押しの検証結果
「漢」や「新」の文字を見ると
プレスボード+PPのほうが抜けが良くなっている。

微妙な差ではありますが、胴仕立てがプレスボード+PPのときのほうが、若干抜き文字がキレイに出ているのがわかると思います。


本来であればここからさらにムラトリ(※)をして、出したい絵柄が出るように調整してきます。
※ムラトリ:グラシン紙やフィルムなどで箔付きが悪い部分を補強して全体に箔がつくように微調整をする作業。

今回の紙の場合、仕立てを変えても、箔を変えたときほどの変化は出ませんでしたが、紙の表面がラフな場合などは、仕立ての効果がより出やすいです。

今回硬めの箔の場合は、どの仕立てでもきれいに箔押しできたので、仕立てによる差はあまり出ませんでした。

まとめ

このように、箔押がうまくいかない場合は

  • 箔を変える
  • 胴仕立てを変える

をぜひお試しください!

繰り返しになりますが、この箔のほうが優れている、仕立てはこれが一番!といったことが言いたいのではありません。
箔押環境や案件によって色々と打てる手が変わりますので、是非、これらの方法を試しながら最適な条件を見つけてください。

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