箔押し印刷用金属版 について ―箔版: 彫刻版編-
今回の記事は彫刻箔押し版についてです。
以前に腐食版に関する記事を作成しました。
今回は彫刻版について取り上げたいと思います!!
そもそも「箔押し って何?」についてはこちらのリンクご参照ください!
彫刻版と腐食版の違い
箔押し版は製作方法で「 腐食版」 と「彫刻版」 に分けられます。
腐食版は金属を薬品で腐食させて製作するのに対して、
彫刻版は切削工具で金属を削り出して製作します。
昔は汎用彫刻機(はんようちょうこくき)と呼ばれる手動の機械で作製していたのですが、
近年ではマシニングセンタ(プログラミングに従って自動で切削や穴あけをしてくれる機械)で
作製することが一般的です。
日本の箔押し印刷に使用される版は腐食版がほとんどですが、
欧米では彫刻版のほうがメジャーのようです。
日本に比べて1製品あたりのロット数が圧倒的に多いことが理由の一つであると考えられます。
彫刻版の魅力としては下記5つが挙げられます。
彫刻版の魅力
- 耐久性が良い
- エッジが立っているので箔切れが良い
- 彫刻深度の深い版を作成できる。
- 複雑な凹凸表現が可能
- 箔押とエンボスの同時加工が可能
魅力1:耐久性が良い
彫刻版は真ちゅう(または鉄)でできているため、
腐食版の銅やマグネシウムに比べると材質の硬度が高く 圧倒的に耐久性が良いです!
よってロット数が多かったり、 版が摩耗しやすい案件では彫刻版を使用いただくことが多いです。
魅力2:エッジが立っているので箔切れが良い
彫刻版は腐食版に比べるとエッジが立っています。
「エッジが立っている」状態というのは、版を横から見たときに
版面から底面に向かっての角度が鋭角な状態です。
エッジが立っていると、
柄が潰れてしまいがちな条件(ベタの中にヌキがあるような絵柄)でも、
箔切れよくきれいに箔押することができるのです。
魅力3: 彫刻深度の深い版が作成できる。
腐食版の場合、溶液で版を溶かす方法のため一定の深度しかいれることができません。
しかし、彫刻版の場合、(切削工具が入る隙間であれば)可能な限りの深度を入れることができます。
最大深度は絵柄によって変わりますので、
ご相談いただければ用途に沿った深度をご提案することができます。
やわらかい段ボールや革などに箔押・型押し(デボス)する場合は深度があり、
エッジが立っている彫刻版での加工が向いています。
魅力4: 複雑な凹凸表現が可能
複雑な凹凸表現が可能とは?という話なんですが
腐食加工においては「なだらかに金属を削る」ということはできません。
腐食版を用いたエンボス・デボス加工では、1段階の浮き上げ・型押ししかできないのです。
一方彫刻版は切削工具の上下運動で削る量を調整できるため、
彫刻深度を機械制御で変えることができます。
なだらかなカーブをつけられたり 頂点に向かってピラミッド型に彫るといった
立体的な形状の製作が可能です。
魅力5: 箔押しとエンボスの同時加工が可能
通常2工程で加工されることが多いエンボスと箔押し印刷ですが、
2工程で加工した場合、
・加工時間がかかる
・シビアな位置合わせが求められる
というデメリットがあります。
※ちなみに2工程で加工する場合は1.箔押し印刷→2.エンボス加工の順番です。(エンボスを先にすると箔押し加工工程で潰れてしまう)
その点肉付け箔押版(にくづけはくおしはん:箔同時エンボス版)を使用した加工であれば、
1工程で済む上に、箔押しとエンボスにズレが生じることはありません!
彫刻版の課題
いい事づくしの彫刻版かと思われますが、腐食版と比較すると
- コストが高い(大体腐食版の10倍ぐらい。絵柄や条件による)
- 納期がかかる(実働5日~)
という課題があります。
これに関して将来的に腐食版と同じレベルに持っていけるのかっていうと厳しい・・・!
というのが正直なところです。
なぜなら彫刻版は腐食版に比べるととても製作工程が多い!!
しかし箔押し印刷とエンボス加工が必要かつ、
ロット数が多い場合は箔同時エンボス版を使用したほうが作業効率も良く、
結果的に作業時間も含めたトータルコストが安く済む場合もあります。
何より他の製品とは違う高級感を出したい!付加価値を高めたい!
というときにはかなりおすすめの製品であります!
※彫刻版の詳細な作成過程はこちらでご覧いただけます↓
以上彫刻版に関する情報をまとめてみました!
より詳細な情報が必要な場合はカタログダウンロードいただくか、
お問い合わせいただければ幸いです。