大小問わず数々の3Dプリンター造形を手掛けてきた、ツジカワ東京デザインセンターが、3Dプリンターを使ってみたい!と思ったときに必ず知っておくべき「 サポート材 」と「積層痕(せきそうこん)」について解説します!

「 サポート材 」とは?

第一弾の記事で、『3Dプリンターは、下から順々に積み上げて形を作っていきます』という説明とともに、こんな図を載せました。

3Dプリンターによる造形の図解

しかしこの図、厳密に言うと正しくないんです。
造形するときのイメージとして、正しくは、こう。

3Dプリンター造形の図解 サポート材が加わった場合

リンゴの周囲にあるグレーの線は「 サポート材 」を表しています。

「下から順々に積み上げて形を作る」という3Dプリンターの性質上、リンゴの葉っぱのような空中に浮いているパーツ角度が急激に変わる部分などは、下から支えてあげないと、上手く積層できずに崩れてしまいます。
樹脂を積み上げるための支えとなるのが、「サポート材」です。

3Dプリンター造形 サポート材がない場合の図解 樹脂が下に垂れ下がってしまう
サポート材 がない場合、このように樹脂が下に垂れてしまいます。

サポート材 の種類と特徴

サポート材自体はどんな3Dプリンターでも必要なものですが、その性質は、大きく以下の2種類に分けられます。

モデルと サポート材 が「別素材」

まずは、「モデル造形用の樹脂」と「サポート材用の樹脂」が、別な素材でできている場合。
サポート材は後から除去する必要があるので、「モデル造形用の樹脂」よりも柔らかい・水に溶けやすいなど、除去しやすい性質を持っていることが多いです。

光造形の3Dプリンター造形時イメージ UVライトで樹脂を硬化させる。
造形時イメージ(赤がモデル造形用の樹脂)
サポート材除去時のイメージ
サポート時除去時のイメージ

ツジカワが保有している、精密でフルカラー造形が可能な『J750』は、「モデル造形用の樹脂」よりも「サポート材用の樹脂」の方が柔らかい性質を持っています。

3Dプリンター製のパンダのマスコット
サポート材に包まれた状態
うっすら黄色い部分がサポート材
3Dプリンター製 パンダのマスコット
サポート材除去後のモデル

J750のサポート材は、爪で引っ掻いても取れるくらいに柔らかいので、樹脂製のスクレーパーや、小型のウォータージェットでサポート材を除去していきます。

モデルと サポート材 が「同じ素材」

次に、「モデル造形用の樹脂」と「サポート材用の樹脂」が、同じ素材でできている場合。
サポート材は後から除去する必要があるものの、同一材料で造形を行うのでので簡単には除去できません。造形後に工具などを使っての除去作業が必要となります。

FDM方式の3Dプリンター造形中イメージ
造形時の断面イメージ
3Dプリンター サポート材除去イメージ
サポート材除去時のイメージ

ツジカワが保有している、『FDM方式3Dプリンター』大型造形が可能な『Massivit』は、「モデル造形用の樹脂」も「サポート材用の樹脂」も同じ材料を使用します。
サポート材は本来必要のない支えの部材なので、造形の際、機械に付属する専用のソフトで、支えつつ・最低限の材料で・除去しやすい形状に設定していきます。

3Dプリンター造形物 サポート材を赤く着色した場合
左の写真が実物、右の写真で赤く着色した部分がサポート材です。
同じ色の樹脂なので、どこがサポート材か分かりにくいことも多々。

モデルの形状によっては、
「サポート材の造形時間や材料の消費量が多すぎる!」
「サポート材を除去する作業時間が膨大!」
なんてこともあるので、その場合には

  • モデル形状を分割して、サポート材のつく場所を減らす
  • モデルの角度を変えて、サポート材のつく場所を減らす
などの工夫を行うことで、効率的に造形を行っていきます。

大型3Dプリンターによる造形の様子 サカナの形状を分割して造形している
サポート材がつく場所を減らすために半分に分割して造形している様子

「積層痕(せきそうこん)」とは?

読んで字のごとく「積層の痕」です。
『3Dプリンターは、下から順々に積み上げて形を作る』という図解を、積層痕に特化して表すとこうなります。

3Dプリンターによる造形の図解
この図解は
3Dプリンターによる造形の図解 積層痕を表現
正しくはこうなる。サイドが盛り上がっているところに注目

このように樹脂を積み重ねる際に少し樹脂が盛り上がります。これが「積層痕」と呼ばれるものです。

1層の厚みによってどのくらい積層痕が目立つかは異なりますが、
「樹脂を積み上げて形を作る」という3Dプリンターの性質上、積層痕のない造形物を作ることはできません。

積層痕が残る3Dプリンター造形物
筋状に見えるのが、積層痕
精密3Dプリンターによる造形物
精密な3Dプリンターであれば、
1層の厚みが1mmに満たないものもあります。
若干筋は見えるものの、表面は概ねなめらか。
積層痕が残る3Dプリンターによる造形物 サカナの顔
1層の厚みが厚いと積層痕は目立ちますが、
その分造形時間の短縮が可能です。

「積層痕」は3Dプリンターならではの現象のため、成形品を模したモックアップや、つるっとした表面が求められるキャラクターのオブジェなどを作るときにはまず「積層痕をどうやって消すか」がカギになってきます。

『積層痕をどうやって消すか』
その方法は、また次回に!